『シュガーホリック』中国語訳の話

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最初に雑談をします。

ものすごく初期の記事。

キャラ声と歌声云々、みたいな内容。大筋では変わりないのですが、一つ考えを改めた点がある。

このときは「どうしてみんな、わざわざ地声と全く違う声で歌うんだろう?」という認識でした。今になって思うと、地声と歌声は別物でむしろ当たり前なんですね。音程ボリュームその他諸々の表現をクリアしようとすれば、喉の使い方は当然変わってくる。こういう音を出すにはこういう風に声帯周りを扱うのか、と身体で覚える。

キャラ声で歌うとなると、その歌うための喉の使い方がそのままでは通用しない。余計難しい。よく声優さんがキャラソンに苦労した話をしますけど、あれはそういうことだったのか。

季咲さんも先日の『ブイアパプリカ』でそれに近いものを求められて、色々歌をレベルアップさせたい欲が高まっているように見えます。堰代さんは、久しぶりのデート配信で披露した『キャラ声HOWEVER』なんか、見事でしたね。

最近チューニングもかなり減って「おやこれは…?」という感じ。KIDS実況の「卒業写真を撮るときうざったいタイプのカメラマン」も、個人的に大当たりでした。これに限らず、あるあるモノマネ全般強そう。

 

ああ、いい加減本題に入らねば。周防さんは、キャラ声も歌声も変わらないタイプですね。当人はよく冗談めかして嘆きますが、こうなってくると逆に利点。少なくともVの者に求められているのは、キャラ声で歌うことでしょうから。

まず『シュガーホリック』の中国語訳からいきましょう。例の中国の春節企画ですね。歌動画とちょっとした雑談タイムという構成。そこで流れた『シュガーホリック』に付いていた中国語訳を見てみようじゃないかと。

一般に、異なる言語の翻訳を原文と照らし合わせることは、内容理解の深化につながります。今回は本人訳なので、かなり直接的。残念ながらわたし自身は中国語を全く知らないので(せいぜい漢文)、アプリで一通り語句を調べつつ解釈に関わる部分で思ったことをざっくりと。もっと詳しい方いらっしゃいましたら、突っ込んだ指摘をお願いします。

 

まず、甜蜜について。甜菜(砂糖大根とかビートと呼ばれるあれ)の甜に蜂蜜の蜜なんで、知らなくても「甘い」ということは察せられる。こういうとき漢字圏って便利。で、問題は第一義の「甘い」ではなく、第二義の「幸せ」。この要素も入るのなら、だいぶ話は変わってきます。

日本語で「甘すぎ」だと、けっこう否定的なニュアンスに聞こえませんでしょうか。このとき脳裏に浮かんでいるのは「甘え」。土居健郎の『「甘え」の構造』で有名ですが、わりと日本人特有の在り方で、他言語だと訳すのに困るらしい。

しかしもし、甜蜜を第二義のプラスイメージ含めて選んでいたのなら、どうか?

たとえば「幸せすぎ」なら、日本語でも否定的には聞こえない。「幸せすぎて後が怖い」みたいな使い方はしますが、幸せすぎる状況そのものの良さは否定しづらい。

今までは「優しい世界」に対して割とシニカルな目線と受け取っていましたが、もう少し肯定寄りかもしれないと思い直しました。

 

次に、「バカにされた世界で」の箇所。ここは明確な自身の勘違いを発見。

てっきり、「(やさしい)世界」が外部の人からみたらおかしいよ、と「バカにされ」てると思っていたんです。そうじゃない。訳を見ると、バカにされたのは「自分」。「わたしのことをバカにした世界で」ということらしい。要するに、一度は評価してくれなかった世界。配信業界というより、音楽業界かしら。

「〜したくてたまんないよ」というフレーズは、新曲の「我慢できない」的なテーマと似ていますね。周防節とでも言いましょうか。しかし、今はスルー。基本的に、我慢の効かない性格だとは思いますが。

 

お次は「シュガーホリックかな?」の就。就是で慣用的に感嘆詞のように使われるらしいので、それなら大した意味はないのですけれど。就が「すでに/とっくに」のような意味で使われているなら、もう少し細かいニュアンスも出る。「もしかしてこれって、わたしとっくに甘いもの無しじゃいられなくなってる?」的な。原文のときの印象は「こういう状態なんだけど、これっていわゆるシュガーホリックなのかな?」でした。

 

続いて「绽放」。「少しでも隣で今日も笑うよ」の部分ですね。笑顔を修飾しています(たぶん)。動詞として「花が咲く」というような意味があるので、そのまま言えば「花咲くような笑顔」でしょうか。

満開の笑顔?そうなると原文に感じたものと違ってくるな、と思い再度調べ直しました。そしてスッキリ。「綻ぶ」の字なんですね。満開じゃなく、蕾が少し開くことを指すらしい。そういえば日本語でも「顔が綻ぶ」ってある。パッと笑うというより、ポッと微笑む方かなと再確認しました。

 

次。「難解もビター」の部分。

もともとよく分かっていなかったのですが、人に対して苦言を呈するとか、良薬口に苦し的なビターなのかな?と考え始める。

そのあとの「安全线」。线は線、セーフティラインということか。「白線の内側までお下がりください」のイメージ。ともかく、それ(=苦言)のおかげで一線超えずに済む…ということ?

ここはどう捉えればいいんでしょうね。マシュマロとか杞憂民とか、そういう話?

 

次。「見えないように泣かないで」の部分。これは単純にどういう状態?という疑問の解消。訳を見ると、「伏せって泣かないで」。「見えないように泣く」は「顔を伏せて(あるいはベッドにうつ伏せとか)泣いているのが見えないように泣く」ということですかね。まあ、意味合いとしては「弱音を吐いてもいいよ」で大筋変わらずか。

 

最後にCメロの「甜蜜甜蜜」。「甘い甘い(過剰摂取)」の部分ですね。Bメロの「(何回も言うよ)甘い甘い(呪文)」は「甜甜蜜蜜」になっています。

「ガラクタの(おもちゃ)」の「破破烂烂」を見る限りでは、AABBのほうがABABより自然か。四字熟語でも、侃侃諤諤とかあるし。

では、なぜ違うのか?特に理由がなければ、わざわざ変えるものでもない。実際、日本語歌詞だと同じ表現。

もちろん単に気分で変えただけ、というのもあり得る。または、中国語で歌うことも想定して、歌詞を訳したのか。あるいは、もともとCメロ部分は「Sugar Holic」にルビをふる形の歌詞なので、意味合いや扱いが違うのかもしれない。

結論はありませんので、皆さんもお暇ならぜひ考えを巡らしてみてはいかがでしょうか。

 

またもや、新曲の話まで辿りつかず。次回に持ち越しです。では。