『一目惚れパラドックス』の終わらせ方

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1ヶ月…2ヶ月近く経ちましたね。

なんとなく気が向いたので書いてみようかと。アルバムの発売もありますし。甘い音の缶では、ちょっと大変な感じもするのですが、大丈夫でしょうかね。

 

こういう記事は、前回の『内緒のモンスター』以来。

懐かしい、5ヶ月ほど前の話です。

あのときは、脱Yunomiにチャレンジして、どこまでいけるか試したのだろう…という趣旨の話。それと並行して、歌唱表現上の技術のバリエーションを増やしたので、それを実際に使うという実戦練習的側面。その上で、楽器のチョイスや歌詞、世界観をどうするかみたいな話もしました。

 

で、『一目惚れパラドックス』。

方向性としては、原点回帰でしょうか。全体を通して、木琴(シロフォン)のような音が印象的ですね。竹っぽくも聴こえる(調べたら東南アジアには竹製のシロフォンもあるらしい)。竹といえば鹿威しも面白そう。上下の目線誘導やメリハリ付けなど、色んな使い方が出来る。

で、木琴のあとには、お琴のような音。和琴って「わごん」なんですね、読み。ワゴン…。一般的なのは筝、ということはこっちなのかな?

導入や締めは木琴、AメロBメロは筝、メインであるサビなどはEDMらしい音がリードする形になっています。和テイストとデジタルなサウンドの融合、いわゆる "kawaii future bass" というやつですね。…いや、わたしもよく知りませんけど。調べれば調べるほどよくわからない。

 

内容に目を移すと、コマ割り/スクリーントーン/集中線などを施したザ・漫画の部分がストーリー補強に貢献しています。舞台設定をある程度はっきりさせる、という選択を取ったのでしょう。これは『シュガーホリック』で採用された、ドット絵ゲーム風にストーリー補強するMVと近いものがあります。

パッと見の状況としては、学生同士の恋愛一歩手前、「私」は一目惚れしてる、相思相愛に思えるがなかなか踏み出せない…という定番のやつですね。そこにいくつか変わった要素が混じっています。

「君」が二次元に恋していたり、「私」は漫画で描かれる二次元状態とサビのlive2D的に動く一枚絵の次元(2.5?3?)の少なくとも2種類の在り方がある…とか。まあそこら辺は色々余白も残していそうなので、深く突っ込まず先へいきます。漫画の世界のキャラクターなんですかね?あるいはウィンドウみたいな表示もサビ中にあるので、ゲームの世界…?引っくるめて二次元の存在、ということか。

個人的に未消化なのは、教室のカットとかで使われる飛蚊症患者のようなエフェクト。うーん、何を表現してるんだろう…。冒頭や2番手前で数式が現れる箇所もありますね。なんとなく、『ドキドキ文芸部!』的な演出?と思うくらいか。一旦ペンディングですね。

それ以外だと…歌詞嵌めとか上手になってる気がします(単純にテンポ感を元に戻したから?)。「ん」を伸ばすのはかなり人を選ぶでしょうけど。

 

声が独特なので、EDM部分を分厚くしても埋もれないのはアドバンテージですね。まだ厚くできるかもしれない。特に低音部は薄く感じる。ある種、和テイストの弱点かもしれませんね。日本の伝統音楽では、人声より低いパートを楽器で奏でて下支えする文化がなく、西洋音楽に触れるようになってから事後的に付け足されたものくらいしかないそうです(Yahoo!知恵袋の受け売り)。

Yunomi氏の曲だと、やはりベースギターでそのあたりをカバーする形になっています。

この低音部をどうするかが "kawaii future bass" の最大の課題かもしれません。

周防さんの場合、ブイアパというご近所にバーチャルベーシストがいらっしゃるようですから、曲の中でのベースの配分とか、バンドミュージックと "kawaii future bass" の違いも含めて意見交換(あるいは合作)をすれば、色々と面白いものが見えてくる気もします。

 

最後に、『一目惚れパラドックス』の終わらせ方。単純にここが好みだったので、この記事を書いたまであります。面白いですよね、この締め方。

live2D的な「私」から、最後の最後に初めて吹き出しのセリフがでる。2.5次元の「私」も実は二次元の「私」と一緒なんだよ、というところでしょうか。

で、ラスト。「パラドックス×2な恋だけど」で、最後は木琴に任せておしまい。早口のパラドックス×2が非常に良いアクセントとなっています。全編ゆったり目だからこそ映えるワンポイントですね。

最後の「だけど」という逆接の接続詞による終わらせ方は、二通りの考え方がありますね。一つは倒置法で、ラスサビの直前部分にかかっている。「パラドックス×2な恋だけど、この恋は本当の愛と信じてるよ 一目惚れだよ」という考え方。もう一つは、「だけど…」のあとに、見えない続きがあるんだという考え方。ここに至るまでのサビではずっと「この恋はパラドックス」と言っていた。けれど最後、「たしかに私にとってもパラドックス、君にとってもパラドックスな恋です。とても実りそうにない。だけど、でも…」というパターン。まあ、どっちも話の趣旨としては変わらないので、好みの問題でしょうね。個人的には後者の方が好み。

 

さて、皆さんにはこの一曲、どんなふうに聴こえたことでしょうか。各々が各々の楽しみ方を見つけて、この暑い夏を乗り切っていきたいものですね。

それではまた。