『ドリオ夫人』

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の話をしたいんですよ。いいでしょう?だってこの作者、ユーザーローカルにも登録されてるし。過去に7,8回はバーチャルユーチューバーとしての自己紹介動画を初投稿してるし。ちなみに、バーチャルユーチューバーとしての動画ならこれが好み。

EDM系だとこれが好き。

もはや説明するまでもないと思いますが、例の『ウ”ィ”エ”』の作者ですね。YouTubeで活動するベーシストがこぞって弾いてみた動画を投稿し、フォロワーによる2次創作も数々。

名前はバーバパパ。ニコニコが衰退した今の日本のネット社会において、力づくで道をこじ開けて世の中に認知させた鬼才。

で、最新作が掲題の『ドリオ夫人』。

皆さん既に指摘済みの要点を、簡単におさらいします。

まず、ドリオとは何かの確認。以下のリンクにもあるように、由緒ある幼児玩具メーカーのおもちゃです。

白い木とカラフルなランドセルのモチーフ。

ストーリーについては説明せずとも、見てお分かりの通りでしょう。子供達が白い木にイタズラをして、家主の夫人の餌食になる。一人はなんとか抜け出した、というお話。

で、野外に生えまくってる植物は大麻(インディカ?)。途中で子供が通った後に生えている(あるいは生やしている)方はかなり背が高い。適当に調べればお分かりの通り、暑くて乾燥した地域では水分を節約するために背の高い品種(サティバ)が生えるらしいので、そちらなのでしょう。この乾燥についてはまた後で触れます。

麻薬について考える際は、バーバパパ氏の他作品も参照する必要がありそうです。大概、ラリってそうな作品ですが、一つ挙げるなら『思い出してEDMにしました』。

こちらはマジックマッシュルーム。ベースをやっていた魚人くんが(悪い人たちに唆されて)薬物に溺れたという話。この系列の音楽に共通しているのは、ざっくり言えば「裏拍中心かつメインポジを与えられたエレキベース」。最たる例が『ウ”ィ”エ”』ですね。

もう一つ確認しておきたいのは、参照元と思しきゲームの存在です。この人の多くの作品には、ゲーム(特に64世代)のオマージュが織り込まれています。

最近なら『砂のやつのアニメ』。

ヨッシーストーリー』のSEやBGM。脇道に逸れますが、Eテレ系のオマージュも多いですね。この動画は『ニョッキ』でしょうか。冒頭の動画なら『ロボットパルタ』や『おかあさんといっしょ』、ゴロリが踊る動画もあります。

話をゲームへ戻します。こちらも探せばたくさんあるでしょうが、ひとまずこの動画。

ご覧の通り、GCの名作『カービィのエアライド』のパロディ要素が含まれています。

で、なんでゲームの話かといったら、今回の『ドリオ夫人』にも関係があるからです。

顕著なのは子供が脱出する前に行うケツワープ。RTAのバグ技で最も有名であろう、『スーパーマリオ64』のあれですね。これに付随して、先日まとめてリメイク移植された『スーパーマリオサンシャイン』『スーパーマリオギャラクシー』のオマージュなのでは?という箇所も指摘されています。サンシャインは子供がイタズラするオレンジ色の汚れなど、ギャラクシーはねじれ廊下。個人的には、ねじれ廊下は『時のオカリナ』かなと思っていますが。美術の教科書にも取り上げられたくらいには、有名ですし。汚れに関してはずっと謎だったので、割と納得感があります。バズーカ(もしかしてこれもマリオ64オマージュ?)の登場も唐突だし、子供の木に対して行うイタズラ表現のファーストチョイスとは考えにくい。

さて、文脈的な要素については一通り攫ったので、残りはまったり本作品の細部に目を向けて終わりにしましょう。

まず気になるのは、子供に腕がないこと。木にイタズラするときも脚で蹴っている。ただ、囚われた子供が扉を開けたり、慌てて閉めたりという挙動もあるため、ないから『手を使えない』とも断定しがたい。一方夫人は、筋繊維剥き出しの腕をお持ちのようです。子供を叩いて気絶させたり、踊る木の前で手拍子したりと、手を使った動作が印象的ですね。

ふと思ったのですが、もし本当に腕(というか肩から先)がないのなら、どうやってランドセルを背負っているんでしょうね。映像をよく見ると、腕を通すベルト部分も遮られず見えているので、たしかに腕はなさそうです。

投げつけられる汚れを見ている視点は、木のそばに立っている子供たちですね。最初は左右に揺れて、次に縦揺れ、最後に再び横揺れ。直後の映像の通りです。

そして、子供が通った後に背の高い大麻が生える。上で述べたように乾燥地域の大麻ですから、子供たちのせいで乾燥してこうなってしまったのかもしれない。なぜかって、汚れはサンシャインの文脈では『水でキレイにするもの』で、「汚れ/水」の対立項が成り立っているから。もしかしたら、夫人はインディカ推しで、サティバが嫌いなのかもしれません。怒られても文句は言えませんね。

そして屋内。ドーナツは麻薬の暗喩。家には何やら管が通っていますね。モノクロ世界のなか、夫人の鮮やかな色彩のドレスが目を惹きます。ちなみに、麻薬を摂取すると世の中が色鮮やかに見えるそうです。モノクロなのは健全の証か。他の子は木や床に埋まっちゃった模様。ランドセルの色は、分かりやすくこの子の現在の状態を表しています。基本黒(健全)ですが、机の上で頭を振るとき、一瞬黄土色(薬物中毒)になっている。

続いて屋外階段を昇るシーン。直前は黒でしたが、ここでも再び色(赤茶系?)がつく。階段も色付いているので、トリップ状態で天にも昇る心地の表現か。初めて屋根が見えて、瓦のようにランドセルを敷き詰めていることが分かります。それだけの子供が囚われたと。実際には、木の脚の長さからして大人も大勢とは思いますが。煙突はタバコのような色合い・質感。大麻を吸引するとき使われるやつでしょうね。

さっきの同じ部屋のループや合わせ鏡の風呂場は、比較的モノクロ。禁断症状が出ていて、なんとか薬物を絶って抜け出そうと必死にもがく様が描かれています。ねじれ廊下は色つきなので、一度薬物に戻ってしまう。

そして最後の風呂場。ケツワープでなんとかこの薬物中毒の迷宮から脱出できました、めでたしめでたし。とはいえ、ランドセルは若干茶色いので油断できませんね。

 

 

要するに。

薬物は怖い、そういうことでした。おしまい。

 

(思い出し追記)

時期の謎がありましたね。

ハロウィンって通常10月末なんですが、なぜ9月末の投稿だったのか。誰か分かる人教えてください。