声に値段がつくのなら

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声に値段がつくのなら…

 

 

昔話『人魚姫』の魔女は、人魚をいっとき人に変えるのと引き換えに、その美声を我が物としました。

 

声は千差万別、多種多様、その人にとって唯一無二、各々の個性に満ち満ちています。

それでも、もし、声自体が取引可能になったなら、どんな声に最も高値がつくのでしょうか。

 

当然、用途・目的によって求められる声は様々です。では、vtuberにおいて最も価値ある声とは、どのようなものか?

 

ASMR、歌、ゲーム実況、雑談…vtuberも色々なことをやりますが、最も汎用性に富み、万人に受け、好感度の高い声は、ピカチュウボイスではないでしょうか。

文字で表すと濁点がついて、濁ったように感じられるけど、決して汚いわけではなく、喉がたっぷりと潤い、声帯を十分に振動させている、そういう声。ほかにいい例えが思いつかないんですが、強いて言うなら嗽、みたいな…。たいてい、低い声も出せます。元来声帯が柔らかいんですかね?ニャースの声も、この系列かしら。こちらは犬山イヌコですが。ニャンちゅう……までいくと、どうだろう…。

 

ともあれ、大谷育江は偉大です。数ある代表作のなかでも、アニメ『ポケモン』におけるピカチュウの演技は、国民的マスコットキャラとして、遍く日本人の心に刷り込まれました。ピカチュウに声が似ているということは、無条件に受け入れられるのとほぼ同義です。

一方その弊害として、「とりあえずピカチュウのモノマネしときゃ可愛いって思われるだろ」という輩が後を絶ちません。そのあたりの話は、私などがいうよりも、輝夜月の中の人が出している「猿でもできるピカチュウ声真似講座」を見るほうが良いでしょう。

この動画では、上記の輩に対する雑なモノマネへの怒り(これだけならありきたりですが)と、「ピカチュウの声真似はなぁ、こうやってこうやってこうするんや!」という高度な実技指導と、「今言ったのは普通の人には難しいかもしれん。けどせめて、ここだけは気をつけてくれ、そしたら許されるレベルになるから」という最低限の留意点を伝えてくれています。彼女なりの矜持が垣間見える、いい動画です。

 

さて、実際この輝夜月系列の声の持ち主は、今どれくらいvtuber界にいるのでしょう。

パッと思いつく限りだと、輝夜月、はちこ、白藤環。カフェ野ゾンビ子なんかもいわれてましたかね。あと、アイドル部のもこ田めめめとか。

はちこなどは、かなり早く(イメージとしてはギリギリvtuber黎明期くらい?)にデビューしたと思うのですが、今の影の薄さに不満なファンも多くいらっしゃることでしょう。

声質、デビューの早さ、動画編集能力(「Raft」実況動画1本目の切り方など、かなり引きのあるタイミングで締めていたのが印象的です)、諸々複合的に考えればもっと上にいていいはずのvtuberです。

もちろんvtuberとしての成功が全てではありませんし、演者のモチベーションや体力、また母体であるサークルの方針にも依るところが大きいのでしょう。一つ思うのは、デビュー時期が今のように生放送主体が当たり前であったり、許される時代であったなら、あまり気張らずに良いスタートが切れたのでは…ということ。

とはいえ、当人にその気さえあれば、いつでも未来はワンダフル。どうやら再始動の雰囲気なので、楽しみに待ちましょう。

 

あんたま、もといVRアイドルえのぐの白藤環も、そのポテンシャルを未だに上手く発揮できていません。というか、岩本町芸能社の魅せ方、アピールの仕方、売り込み方の問題ですね。基本的にこのブログでは〇〇(特に運営)が悪いという物言いは避けているのですが(というのも、いつだって物事は複雑に絡み合っているから)、これに関してはハッキリと自信をもって言えます。だから岩本町芸能社をやめろというわけでもありませんが。彼らも彼らなりに頑張っているのでしょうし…。

 

白藤環の声、これはもうvtuber界でも一二を争うスペシャル・ワンです。プロの声優やそこからドロップアウトした人など、声の魅力に自信のある者ばかりがひしめき合うこの界隈にあってさえ、彼女の声質、発声、滑舌、バリエーションの豊かさは引けを取りません。もちろん細かい技術は劣るでしょうが、特別なトレーニングを積めばどこまでも上を目指せるに相違ありません。

(追記5/17:本記事執筆当時は、彼女がその筋の方だと知る由もありませんでした。とすると、これ逆に失礼なことを書いているのでは……??)

 

また、白藤環には努力する才能があります。えのぐのメンバーの中で、一番歌が下手だったのは白藤環です。鈴木あんずと日向奈央が頭2〜3個ほど抜けて上手く、夏目ハルはまずまず、栗原桜子と白藤環は聴いていて不安になる…といった具合でした。意外に緊張しいなのもあり、はじめのころはいつも声が震えていました。今の歌を聴くと、隔世の感があります。

ダンスも似たようなもので、日向奈央が運動神経の良さを見せる他は、だいたい先ほどの序列と変わりません(あくまで個人の主観)。が、白藤環は明確に運動音痴です。栗原桜子も女子にありがちな運動しないタイプのようですが、ダンスに関してはやればできる感じを受けます。白藤環は、もうゴリゴリの運動音痴です。動きを覚えたり再現したり、なんてのは苦手中の苦手で、ダンスする上で致命的なのではと思うくらい。それでも、なんとか食らいついていっています。

 

そして、彼女にはもって生まれた才能があります。アイドルとして、声や歌やダンスよりもっとずっと大事なもの。それは、周りを明るくする才能。オーラ、雰囲気、カリスマ性…様々な呼び方があるでしょうが、これだけはどんなに血の滲む努力をしても手に入りません。まさにギフト、神からの贈り物であり、そういう才能の持ち主を、私たちはTalent(才能)と呼ぶのです。