VRアイドルえのぐの窮状

(1970字)

事態は、思ったより深刻です。

ご興味ない方も多いかもしれませんが、VRアイドルえのぐのことです。

夏目ハルに続いて、栗原桜子も戦線離脱。5人のうち、2人が休養に入りました。

 

どこから始めたものか判断に困りますが…この順番は意外ですね。傍目から見て、1番メンタルをやられているのは、栗原桜子だと感じていたからです。

しばらく前(たしか360°配信のとき)に、本番中なのに無言のままで、途中でスッと出ていってしまったことがありました。正直、あそこでもう限界は来ていたと思います。だから、夏目ハルのほうが先にリタイヤしたのは意外でした。てっきり、生活の変わり目的な諸事情かと思っていたのですが、この流れを見るとそうとも言えなさそうです。彼女も彼女で、無理して演じている部分があったのかもしれません。

かねてから述べている通り、アイドルというのは華やかなりし職業では決してなく、想像以上の心身を削って成り立つ身分です。昨今の秋元康系列のアイドルグループからも、多くの人が察していることでしょう。

かつてアイドルは、選ばれし人間のみに許された肩書きでした。しかし、そんなタレントを探し出すのは宝くじで一山当てるようなものです。商売にするためには、比較的容易に確保できる人材を売り込む必要があります。結果、「会えるアイドル」として、自ら価値を暴落させることになる。

…いや、脱線しました。2人の休養に関して、今の話は本筋ではありません。やや次元の違うところに原因があります。

 

人が疲弊するのは、たいてい「労多くして功少なし」のときです。いくつかの要素が絡み合って今の状況があるので、端的に述べづらいのですが、一つずつ確認してみます。

 

まず、ゼロから何かを生み出すことはできません。彼女たちも篩にかけて選ばれた原石ですから、当然なにかしら光るものがあります。しかし、少ない。あるいは、引き出す術を知らない。若さといってもいいでしょう。この場合、実年齢は関係ありません(若さという特権については別途記事を設けますので、一旦脇に置きましょう)。それはそれでいいのです。しかし、ですね。彼女たちの戦場はバーチャル。はっきり言って、若さによるメリットは、限りなくゼロに等しい。それこそ、似たような世界で何年も辛酸を舐めてきた人たちが、最後のチャンスとばかりに長年培った能力をフル活用して挑んでいるのです。その意味で初めから不利な戦いであることを、念頭においてください。

 

しかし、彼女たちにもチャンスはありました。先行者利益です。vtuber黎明期から活動していたのですから、真っ白な消費者層を自分色に染め上げることもできたはず。しかし、それは叶わなかった。それはなぜか?戦略がおよそ前時代的で、悪手と後手の連続だったからです。

 

本人たちの意思に反して別チームにしたり、なんのアテもないのにフォロワー〇〇人いかないとダメとノルマを課したり、上手くいかないからと結局合流させたり(しかもそのことで後入りする形になったメンバーに申し訳ない思いをさせて)、アイドルという今やなんの意味も持たない肩書きにこだわって活動内容を制限したり(売れっ子芸能人がYouTuberにさえなるこの時代に!)、SNSの内容を検閲したり、挙句懲りずにまたアテもなく目標〇〇位とケツを叩いた結果無駄に戦意喪失させたり。

技術は最先端、しかし戦略は昭和に置き去りのままです。もうすぐ令和がくるというのに!

 

せめてもの救いは、馬越健太郎がブログで事務所の至らなさを指摘していることでしょう。とはいえ、彼のいっている弱小事務所という部分はあたらないと思います。弱小なら、5人同時に破綻なくトラッキングできる機材は得られませんし、それなりに名のある声優、ましてやカンニング竹山といった芸能人を頻繁に呼ぶことはできないでしょう(出来たとして、それをするかどうかは別問題ですが)。

 

個人的には、多様性の観点から、こういう前時代的な戦略のvtuberがいてもいいと思っています。何十年と続ければ、ひっくり返るときが来るかもしれない。ただ、当人の側からすれば、必死で事態を好転させようとしているはず。それが痛いほど伝わるからこそ、今こんな記事を書いているのです。

 

歌やダンスを見ていれば、キャパシティ限界で活動していることはわかります。その道のプロになるべく下積みをしてきたのならともかく、一年前この門を叩いたばかりなのです。次々降りかかる新曲と振り付けに四苦八苦で、以前の曲のクオリティを維持できない。

絵空事』は、曲も踊りもズバ抜けたものがあります。この曲が初お披露目されたときのパフォーマンスは、素晴らしいものがあった。

あれは、本当の絵空事になってしまうのか。今がまさに正念場です。