音猫ななしと周防パトラの今後

(2216字)

前回の続きです。

ここで、漸く音猫ななしの様子見の話に戻ります。

vtuberにおいて、運営の立ち位置は非常にデリケートな問題です(これはまた別途記事を設けますが)。どの程度露出するか、どういった印象をもたせるか。

Honey Dazeのクレジットで作詞作曲として明記された音猫ななしが、これから担当曲を増やすか否か?

その判断をするために、消費者の反応を伺っている。今は、そういう時期です。

 

改めてになりますが、Honey Dazeという曲は、いわゆるアイドルソングです。それ以上でも以下でもない。これといった作り手の個性を感じないのは、私に音楽的知識がないからか、あるいは敢えて色を出さないようにしているのかもしれません。

もし音猫ななしが名のある作曲者なら、箔をつけるために名前を出すでしょうし(少し違いますが、例えば猫宮ひなたにおけるGYARIのように)、そもそもそんな人がvtuberの運営になる理由もとくに見当たりません。

 

一旦、これまで三記事にわたって述べたことを確認します。Honey Daze発表前後から、周防パトラの創作が止まっています。これはコメントでご指摘あった通りです。スランプ、多忙、小休止…理由はわかりませんが、とにかくその間を繋ぐために音猫ななしがリリーフ登板した。ちょうどこの頃、ハニストはアイドル路線に切り替えつつあったので、誰が作ってもそこまで変わらないであろうテンプレ通りのアイドルソングを担当することで、音猫ななしの主張・露出を極力抑えることにも成功しました。運営側が一度表に出てファンに認知されてしまうと、再び黒子に戻ることは難しいからです。出るなら出るで、それなりの筋書きと準備が必要になります。

先日全員の3D体をお披露目し終わったところでもありますね。歌って踊れるアイドル路線には欠かせない要素です。もっとも、5人同時に動き回り、それを反映させ、かつ放送事故レベルの破綻を起こさせない設備は当分手に入らないでしょう。それこそ、VRアイドルえのぐとのコネでもない限り…。

 

で、問題は今後、音猫ななしに音楽面での主導権を渡すかどうか。周防パトラの創作が行き詰まりを見せているのは確かです。が、個人的には、音猫ななしの出番をここで一度切るべきだと考えます。

前回、vtuber以前と以後で、どれだけ付加価値を付けられるかという話をしました。その観点から見た場合、「周防パトラが作った」という要素が、多くのファンにとって何物にも代え難い付加価値を生み出していることを、最優先に考えるべきです。言い方は悪いですが、曲のクオリティ自体は大した問題ではない。少なくとも当面は。

vtuberに限りませんが、特にこういった形のないものを売る商売では、心意気というか、本人の意思・自発性が大事になってきます。運営主導ではなく、本人自ら事を進める。ファンとは、そういうところに価値を見出す存在なのです。返す刀で申し訳ありませんが、VRアイドルえのぐが伸びないのは、運営の力が強すぎるから。地元で災害があっても呟くことすら叶わぬ徹底した管理体制、凝り固まったアイドル観がもたらす雁字搦めの活動範囲。これ以上掘ると話が終わらないので別日に回しますが、要はそういうことです。

音楽活動をするvtuber、これは星の数ほどいます。でも、自らそうしたいと願い、曲を作り、歌い、MIXする。完成品に仕上げる。これは、極々わずか。

銀盾を得たということは、つまり試行錯誤の猶予を得たということです。納得いかなくても、とにかく一定のノルマのなかで創り続ける。産みの苦しみを味わう。そのチャンスを勝ち取ったのです。

もちろん、音猫ななしが完全に姿を消すべきだとは思っていません。適宜他人の助言を受けられることは、大きなメリットです。それに、ハニストのアイドル曲のこともあります。全てを一手に引き受ければパンクするだろう、というのは目に見えています。では、どうするか?

 

周防パトラが、蒼月エリの専属作曲者になる。これが、今回私の到達した結論です。ハニストの曲は一旦、音猫ななしや外部に任せましょう。なんならYunomi氏に依頼するのもアリです。

蒼月エリを活かすには、どういう曲作りをすれば良いのか? ここだけに注力する。何でもかんでも良い曲が作れるのなら、とっくにやってます。やっと得たチャンスを我がものとするためには、思い切った決断が必要です。この一点に全力を注げば、今までにない音楽面でのブレイクスルーを果たせる可能性が、十分にある。

そもそも、蒼月エリは根本的にアイドルソングと合っていません。歌唱力が段違いで浮くということもありますが、彼女の歌い方は癖が強い。多くの人に刺さることを求めるというより、自分の中の理想をどこまで追い求められるか、という歌い方です。蒼月エリにも、いずれどこかで壁を破ることを求められるでしょう。

 

一連托生のハニストとはいえ、ずっとそうするわけにいきません。ある種ドライな選択を迫られるときが、必ず来ます。アイドル路線と本格路線、二兎を追う者は一兎をも得ず、です。

 

…まあ、こんなところで熱弁したって、儚い努力なのですが!

1,000字を目安に書いているつもりなのに、2,000字を超えてしまいました。いやはや。

また次回会いましょう、どうぞよしなに。

(3/31加筆修正)